商工会議所と中小企業診断士の関係
中小企業診断士にとって、重要なパートナーであり、人によっては取引先にもなり得る商工会・商工会議所、その関係を紹介します。
全国各地にある商工会議所/商工会、それと中小企業診断士って関係が深いんですよー
商工会/商工会議所とは?
商工会/商工会議所は、小規模事業者を対象にした支援機関です。
どちらの組織も、法律(商工会法、商工会議所法)を根拠に設立された組織で、会員(中小企業・小規模事業者)がおり、互いの事業発展のために総合的な活動(経営相談、共済、融資等)を実施しています。
大きな違いとしては、商工会の会員は小規模事業者が9割、これに比較すると商工会議所には中堅・中規模の事業者が多いと言った点に違いがあります。
中小企業診断士との関係
中小企業診断士は経済産業省登録制度の国家資格で、商工会議所等は経済産業省所管の特別民間法人なのです。
経済産業省つながりなんだよね。
厳密には、日本商工会議所と全国商工会連合会が経済産業省所管の特別民間法人で、その傘下に全国各地の商工会議所/商工会があります。
全国各地の中小企業・小規模事業者の経営改善や支援をするため、経済産業省の予算で特別民間法人に仕事を依頼しています。たとえば、小規模事業者持続化補助金などです。
補助金や支援制度に関する説明は本記事では割愛しますが、...こうした業務を請け負う特別民間法人は中小企業診断士に仕事を依頼することが多いのです。
独占業務はないけれど、経済産業省つながりで公的業務はいくつもあるんですよね。
商工会/商工会議所から依頼される仕事
ザックリわけると、3パターンあります。
商工会議所から中小企業診断士に依頼される仕事として、①自分自身が経営指導員の仕事に従事する、②専門家派遣などの仕事をもらう、③セミナー等を請け負うの3種類あります。
① 経営指導員の仕事に従事する(巡回指導、窓口指導)
商工会議所などで経営指導員の仕事に従事する中小企業診断士は少なくありません。要は、中の人です。
中小企業診断士に合格してから商工会議所に転職する方もいますし、もともとの職員が中小企業診断士の資格取得を目指す場合もあります。
商工会の経営指導員は、地区内における小規模事業者に対し、経営の改善・発達を図るのが仕事です。
金融・経理・経営などについての相談にあたり、経営計画の策定や国や県の小規模企業施策のコーディネート支援を行います。難しく書いてますが、正直な所、何でも屋さんかつサラリーマンです。
従って、支援の方法(おおよその手順は定められていますが)についても、所属する組織によって、方針が異なり、営業がメインのところもあれば窓口がメインのところもあります。
共通しているのは、中小企業の自計化(記帳・決算等の支援)や補助金申請の支援等のニーズが多く、書類仕事が多い点です。
また、地域産業の振興に必要な地域の経済的特色などの条件の把握、分析などを行い、地域振興の各種事業計画の立案や事業を推進といった、仕事を任せられる事もあります。
そのため、土日は地域のお祭りのお手伝いをお願いされたり泥臭い仕事もあります。
② 専門家派遣事業の専門家として支援を行う
専門家派遣事業を行う、商工会/商工会議所からの依頼に基づき中小企業の支援を行う事もあります。
中小企業診断士の資格を持っていると、「ミラサポ」や「エキスパートバンク」といった専門家データベースに登録することができます。
支援機関に登録しておくと、クライアント(事業者・商工会等)からの依頼に応じて、データベース上でその支援テーマに対応できる専門家が検索され、対応可能な専門家が支援の打診がされます。
ちなみに、こうしたデータベースの登録は公募されることが多く、その次期はまちまちですが、年度末になると募集するところが多いです。
もちろん、専門的な分野については各地の診断協会経由や人づてで依頼をいただくこともあります。
③ 各地商工会/商工会議所等でセミナーを請け負う
「中小企業診断士のセミナー講師事情」で詳しく書いたように、中小企業診断士は商工会/商工会議所等からセミナーの講師を依頼されることもあります。こうした依頼は、その支援機関の経営指導員からの依頼が多いのです。
セミナーのテーマは機関により様々ですが、そのときの政策テーマ(IT活用・人手不足対応)や補助金申請に関するものが多いように感じます。
中小企業診断士に求められていること
商工会/商工会議所と共に、仕事をする中で、中小企業診断士として最も大切なことは小規模企業支援への理解かと思います。
特に小規模企業支援では、中堅・中規模企業支援と違い、いわゆる家業への支援がメインになります。
そのため、経営戦略の作成や組織戦略と言った大所高所のアドバイスはあまり好まれず、実際に共に手を動かすことや経営戦略の実現のために伴走しながらお手伝いをする事が求められます。
また、セミナー等でも実際の作業ベースまで落としたセミナーが好まれる傾向にあります。
例えば、ITに関するセミナーだったら概要の話だけではなく、ITツールの導入手順から使い方までを具体的に説明することが望まれます。そうしないと、人手が少ない小規模企業では実践をしてもらえないのです。
業務を依頼する、一緒に支援をする商工会/商工会議所の経営指導員もこうした事情はよく知っているため、支援を行うにあたっては、こうした目線・スタンスで事業者とつきあえる中小企業診断士であることを、何より求められるかと思います。