中小企業経営・中小企業政策の勉強方法/1次試験
中小企業診断士の1次試験科目「中小企業経営・中小企業政策」の出題範囲や勉強方法、学習のコツについて解説します。
中小企業経営・中小企業政策では、中小企業に関する統計や中小企業に関する政策を学びます。
自治体や支援機関、中小企業向けのコンサルティング会社などにつとめていない限りは中小企業関係の統計データや政策にはなじみがなく身近に感じづらい科目です。
しかし、診断士合格後の中小企業支援においては役に立つ知識が多く、受験生も積極的に取り組む方が多い科目です。
なお、多くの予備校では、最後の講義として行われますが、暗記しなければならない事項が多く、問題の性質から毎年新たに勉強をし直す必要があり、受験生にとって最後の山場といえます。
では、中小企業経営・中小企業政策では何を学べるのか、どのように勉強すべきなのか詳しく紹介していきましょう。
中小企業経営・中小企業政策とは?
科目設置の目的
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。
そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。
また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。このため、中小企業の経営や中小企業政策全般について知識を判定する。
中小企業経営・中小企業政策の配点
中小企業経営・中小企業政策は中小企業診断士の1次試験の一つの科目で700点のうち100点を占めます。
1次科目 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|
経済学・経済政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
中小企業経営・中小企業政策の出題範囲
- 中小企業経営
- 中小企業政策
上記が、試験要項に記載されている「中小企業経営・中小企業政策」の出題範囲です。
最近の中小企業の動向について、毎年中小企業庁が発行する「中小企業白書」から出題されます。
中小企業経営・中小企業政策の基本教材
独学で勉強する場合かつ、まだ教材を選んでいない場合であれば、大手資格学校TACが出版している中小企業診断士の1次試験向けの教材が無難です。
TACの通学講座・通信講座で用いられている教材とほぼ同じ市販教材なのです。
テキスト
1次試験に必要な基礎知識が詰まったテキストです。
問題集
1次本試験や模試、答練試験で出題された過去問の中から、重要かつ良問だけを抜粋し、論点毎にまとめられた問題集です。
過去問集
中小企業診断士1次試験で出題された過去5年分の過去問と、解答解説がまとまった過去問集です。
中小企業経営・政策の難易度と傾向(概要)
中小企業経営政策・経済政策は、科目合格率が15%弱と他の科目と比較すると合格率が低い科目であり、最新のデータや制度・法律を暗記する必要があります。
また、試験時間が90分、問題数も30問以上と量が多いため暗記量がものをいう試験になっています。
一方で、問題数が多いことで難問・奇問による影響が少なく、また知識量に合格率が左右されることから難易度の振れ幅が少ないことも特徴である科目であるといえます。
中小企業経営・政策を学習すると身につく知識
中小企業経営政策では、中小企業白書等の統計データから学ぶ中小企業経営と、様々な法律や制度を学ぶ中小企業政策の2つを学びます。
中小企業経営では、前年度の中小企業白書や小規模企業白書に記載のある統計データなどを中心に中小企業の実態についてを学習します。
中小企業白書には、その年の注目すべき施策や中小企業の今後の課題などが掲載されており国の中小企業施策をつかむためのヒントを得ることができます。
中小企業政策では、中小企業関係法令や、国や支援機関が行う事業から出題がされます。
経営革新計画や経営力向上計画といった計画認定制度や補助金などは、中小企業からのニーズも高く診断士を取得して実際に支援を行う際などに役に立ちます。
いずれも、今後中小企業診断士として活躍し、かつ独立を考えられている方からすると、コンサルティングスキルと同程度必要となる知識を得ることができる科目です。
中小企業経営・政策の勉強方法
中小企業経営・中小企業政策は中小企業白書や中小企業関連事業・法令からの出題が多く、白書のデータをすべて暗記しようとすると非常に範囲が広くなってしまうことが特徴です。
したがって、テキストや予備校の講義などを活用して重要なポイントを中心に学習することで学習に無理や無駄が内容に留意する必要があります。
初期
学習の初期では、授業そのものが始まっていないことも多いため、実際に試験年度のテキスト等が発売されるまでに、前年度の中小企業白書を通読するといった予備の学習が有効となります。
中盤
学習の中盤、特に講義が始まった際は、主要論点を覚えることが重要です。
暗記する事項が多い中小企業経営・中小企業政策ですが、中小企業白書の内容で出題される重要なテーマが教科書・講義などではまとまっています。
したがって、まずは教科書・講義の内容をしっかりと押さえ暗記をして行く必要があります。
仕上げ段階
学習の仕上げの段階では、模試や演習問題を活用し主要な論点以外で、出題が見込まれる周辺の論点についてを暗記する必要があります。
毎年問題の傾向ががらっと変わってしまう中小企業経営・中小企業政策においては、各予備校が予想して作成した模試や演習などを複数とくことで網羅的に論点や出題傾向をつかむことができます。
なお、過去問の対応については、出題のされかた等になれるといった観点では重要ですが、法改正や制度改正によってその年の問題が変わってしまうため、インプットには不向きです。
中小企業経営・政策の勉強のコツ
日本政策金融公庫、中小基盤整備機構、信用保証協会の支援制度や融資制度、中小企業退職金共済、倒産防止共済、小規模企業共済の共済制度、事業共同組合、企業組合、協業組合、商工組合、商店街振興組合などの組合の累計などは複数の対比で出題されることもあり、正誤判定ができるよう表などを使って横串で暗記をする必要があります。
中小企業白書・小規模企業白書の隅々まで暗記する必要はありません。
白書は毎年テーマが変わる部分もあり、また細かい数値が出題されるため、こうしたところまで暗記しようとすると時間足らず結果として、一次試験直前の貴重な勉強時間を無駄な論点の記憶に割いてしまうことになります。
ですので、教科書や講義を活用し効率的に暗記することが重要です。
頻出項目(頻出論点)
- 業種別企業数
- 業種別開廃業率
- 中小企業基本法
- 中小企業等経営強化法
- 日本政策金融公庫、中小企業基盤整備機構、信用保証協会の支援制度
- 中小企業退職金共済、倒産防止共済、小規模企業共済の共済制度
意外と重要な論点
出題されるのが試験の前年度の白書であるという点に注意が必要です。また、中小企業政策については中小企業政策利用ガイドブックという国が発行しているガイドブックがありこれを一読することも参考になりますが、白書と同様すべてを記憶するには量が膨大なので注意が必要です。
中小企業経営・中小企業政策が苦手な方
基本テキスト、問題集、過去問の3点セットを用いて、しっかりと勉強することで1次試験に合格できるレベルには達します。
ただし、得意不得意は誰にでもあります。中小企業経営・中小企業政策を不得意としている方の大半は勉強時間の不足、または暗記の効率の悪さです。
「中小企業白書」「小規模企業白書」の全文を読む必要はありませんが、概要部分を読むことをおススメします。
参考 中小企業庁:中小企業白書
白書全文を読むのは効率が悪すぎるのですが、概要を読むのはおすすめです。一度読むと全体像をつかみやすくなりますよ。
どうしても苦手を克服できない場合の対策
ネットで調べると1次試験は簡単に合格できる、とか、1年ストレートで合格しました!という情報がたくさんありますが、中小企業診断士試験の難易度は決して低くありません。
複数年受験を覚悟し、科目合格制度も上手く活用し、苦手科目も一歩一歩落ち着いてコマを進めることも大切です。
いやいや、手っ取り早く苦手科目を克服して、なるべく早く中小企業診断士になりたい!という場合は、独学にこだわり過ぎる必要はないと思います。
たとえば、中小企業診断士の1次試験対策講座ではもっとも有名かつ安定性のある「資格の学校TAC」のWeb講座を受講するのも一つの手段です。
7科目受講すると20万円以上しますが、1次単科生で中小企業経営・中小企業政策のみ受講する場合であれば、4~5万円程度で受講することができます。
そのほか、「STUDYing(スタディング)」や「診断士ゼミナール」など、4~5万円程度で1次試験・2次試験対策ができる格安の通信講座もあります。
各講座の長所や短所は、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。