中小企業診断士の仕事やりがい(商店街支援編)
これから試験勉強を始める方、検討している方は、「中小企業診断士ってそもそも何をする人?」「中小企業診断士の仕事のやりがいは?」など気になることも多いと多います。
この記事では、実際、中小企業診断士としてどういう支援をしているのか、何がやりがいか、具体的な事例を挙げて紹介したいと思います。
今回は、全国各地にある、商店街の支援のやりがいについてです。
商店街ならではの課題
商店街は明確な定義がありませんが、その言葉から想起されるように、個店の集積地帯を指すことが多いです。
こうした商店街の課題は顧客の減少傾向にあるところと、顧客が増加・維持されているところで異なります。
シャッター街と化している、もしくは衰退してる商店街をイメージしてください。
顧客が減少しているところでは、地域そのものに観光資源としても魅力がないこと、あるいは、住民の数が減少していることなどが原因であることが多く、こういった点をどのように克服していくかが、課題になります。
一方で、顧客数が維持されているところでは、大手のチェーン店が積極的に出店攻勢をかけていくことが多いため、こうした大手企業との差別化をしてどう生き残っていくかを考えることが、課題になります。
以上のように、その商店街が、顧客の減少傾向にある商店街か、あるいは顧客が増加・維持されているかという点で課題がことなるといった特徴があります。
商店街ならではの支援の難しさ
商店街支援を行う際は、意思決定の統一と、商店街として一丸となって行動をとることが難しいことが特徴です。
二次試験の事例Ⅱで商店街が題材にされたりしたこともありますが、現実問題として商店街ならでは難しさもあります。
規模は小さいですが、商店街の店舗さんは、それぞれが一国一城の主の経営者なんですよね
それぞれのお店で自分の考えがある中で、何とか考えをまとめ上げ何かキャンペーンを行ったとしても面従腹背で、実質的には助言が空回りすることも少なくありません。
どのように商店街の個店経営者に納得してもらい、そして実施してもらえるか、そこに中小企業診断士の手腕が問われるのです。
商店街支援の事例
事例1:人口10万人の市の商店街
依頼のあった、商店街は人口10万人の市にあり、その商店街は駅前に立地していました。近くに大学などがある恵まれた立地であったため、人口減少などの影響を受けることはなかったのですが、一方で大手企業のチェーン店が次々に出店し、その商店街ならではのサービスの開発を検討していました。
具体的にどのような支援をしたのか?
本件では、「新たなサービスの開発」が重要である支援であったため、商店街の経営者を集めた新商品開発のためのワークショップを実施しました。
ワークショップの中では、e-stat等の統計データをグラフ化した資料や、実際の商店街のユーザーへのインタビューの結果等をまとめた資料をベースに、ブレーンストーミング方式での新サービス開発の方法をお伝えしました。
たったこれだけ?と思われるかもしれませんが、経営者が別々である商店街では、一丸となって何かすること自体、今まで行われていなかったのです。
事例2:人口30万を超える市の商店街
相談のあった商店街は人口30万を超える大規模な市にはあるものの、商店街立地する地域は高齢化が進み、特段観光資源などもないため、顧客の減少が進んでいました。
こうした顧客の減少にどのように対応するかということで、商店街の中のある店舗から支援の依頼がありました。
具体的にどのような支援をしたのか?
これまでの人口の推移や今後の開発計画を見る限り人口の増加は見込めず、またその店舗では独自の商品を持っていたため、ECでの商品販売を提案しました。
幸い中心となった経営者のITリテラシーが比較的高く、短い時間のレクチャーで使い方をマスターし、現在はそのEC事業での売り上げが収益の大きな柱になりつつあります。
各店舗でECサイトを作るよりも、複数の店舗商品をまとめて販売した方が運営コストが下がるということで、商店街にある目玉商品の取り扱いも開始しました。
まだ定期的に支援している途中です
中小企業診断士としてのやりがい
商店街支援を行う際のやりがいは①チームでの支援ができること、②街の風景が変わる提案ができること、③身近なビジネスであることの3点だと思っています。
チームでの支援ができること
商店街支援の際、作業量が多くなるとプロジェクトチームを組んでの支援となることがあります。
それぞれの中小企業診断士が得意としている分野や業種を担当し、商店街全体の方向性については、中小企業診断士同士で喧々諤々の議論しながら具体化していきます。
こうしたプロセスは、中小企業診断士の資格を取得する際の実務実習等で行うことはあるのですが、独立した診断士は一匹オオカミでの仕事が多くなりがちです。
初心に戻れることと、ほかの中小企業診断士や専門家から刺激を受けられるという点で得るものが大きいのではないかと思います。
中小企業診断士の資格保有者は、本当に様々なバックグラウンドを持ってる方がいますよ
街の風景が変わる提案ができること。
大きなプロジェクトになると、商店街が一丸となって今後の方向性を決めていくこととなります。
実際にその支援がうまくいけば自分の提案や、自分たちがまとめたことが実際の街づくりに反映されていきます。
都市計画というほどの行政や大手デベロッパーのような規模ではありませんが、これは個社支援では味わうことのできない大きなやりがいです。
身近なビジネスであること
商店街支援のクライアントの多くはBtoCのビジネスモデルであり、実生活の中では自分がユーザーとなることもあり得る商売です。
従って、提案をする前の事前の調査の際などに自分が普段使っているお店がどのように収益を上げているか等を研究することができ、それが実生活に生かせる、という点も非常に面白かったです。
こんなに人通りが少ないのに、どうして商売が成り立つのだろう?という疑問がすっきりしました
商店街支援については、公的機関からの依頼や、中小企業診断士協会からの紹介といったルートが一般的です。
一方で、商店街の多くには、その地域の診断士が入っていることも多くこうした方に紹介していただくといったケースも多くあります。
特に、商店街支援の場合は分析の量が多くなることもあり、診断士のプロジェクトチームを組むことも少なくなりません。
従って、公的支援機関等の公式ルートからの依頼を待つよりは、有力な診断士経由で案件を手伝った方が結果的には早期の受注につながります。