中小企業診断士のセミナー講師事情
中小企業診断士を取得すると、取得前に比べてセミナー講師をする機会が多くなります。
なぜ、資格を取得すると、セミナー講師をする機会が増えるのか、中小企業診断士のセミナー講師事情について紹介します。
セミナー講師ををする機会が増える理由
中小企業診断士って、セミナー講師をしている人も多いよね。どうしてなの?
セミナー業だけで生業にしている方は少ないけど、何だかんだ講師をやってる人多いよね。説明しましょう。
商工会議所などの支援機関では顧客向けに情報提供を目的としたセミナーがあります。
こうした、セミナーの主催者はネタ不足に困っていることも多く、流行のテーマでセミナーをできる方には比較的声がかかりやすくなっています。(たとえば、IT利活用、AI・RPA、人手不足対応等)
そこで、「商工会議所と中小企業診断士の関係」で紹介したように、つながりのある中小企業診断士に声をかけます。
つまり、「中小企業に向けてAI活用の事をわかりやすく話せませんか?」「中小企業ができる人手不足対策の方法について話せませんか?」といった形でセミナーの相談や依頼を受けることが多いのです。
こういうのを話せる人って意外と少ないんですよね。
相談を受けたテーマで話せる場合はそのまま仕事を受託します。が、そのテーマで話せないこともあります。そんなときは...
他の士業に比べ、中小企業診断士は横のつながりが強いので、相談を受けた診断士が対応できない場合、知人の診断士を紹介することもあります。
セミナー講師を務めるメリット
セミナー講師を務めるメリットは、実は、報酬よりも営業・自己研鑽といったポイントが大きいです。具体的には以下のようなメリットがあります。
知名度アップで仕事につながる
セミナーに登壇することで、多くの方に「この中小企業診断士はこの分野に知見がある」という印象を与えることができます。
事実、セミナーの受講者から後日、直接仕事の相談・依頼をいただくこともあり、営業効果はとても大きいのです。
ちなみに、セミナーの主催者がWebサイト上でセミナーの告知をなどで行ってくれることもあります。
そうすると、自分の名前で検索をするとその内容が検索結果の上位に表示されることもあり、結果として、セミナーをした分野での専門家である。という印象を与えることができるようになります。
勉強せざるを得なくなる
セミナーに壇上する前に、必ずテーマの分野の最新トレンドを勉強せざるをえなくなります。
特に大企業を辞めて独立した方などは、情報が更新されていない事が多く、そのままでは登壇ができないため、事前に勉強が必須です。
そんなデメリットがあるのなら、セミナー講師の仕事を受けない方がよいのではないか?と疑問に思われるかもしれませんが、実は良い機会なのです。
中小企業診断士として経営コンサルティングをする場合、基本的にはアウトプットがほとんどです。
常日頃新しい情報をインプットしていくことを心掛けていても、コンサルティングで忙しくなるとどうしてもインプットが疎かになりがちです。
時代に取り残されたコンサルタントは、誰にも求められなくなりますからね..
そこでセミナーに登壇する日が決まると、事前に勉強せざるをえなくなり、新たな知識や業界のトレンドを把握する機会となり自己研鑽としても非常に効果的なのです。
人前で話すのが苦手でも慣れるのか?
中小企業診断士へのセミナーの依頼は基本的に、その人を見て依頼があることが多く、いきなりセミナー本番を迎えることは少ないです。
そのため、依頼者との連絡調整等の場で、「この人に任せられない」と判断されたら、そもそもセミナー講師の仕事はいただけません。
逆説的に言えば、セミナーの依頼があった場合、「最低限、人前で話すことができる」と判断がされている訳なので、後は精一杯準備を行えば人前で話すことが苦手な方でも大丈夫です。
確かに、中小企業診断士で人前で話すことが苦手だったという方は一定数います。でも全く話せなかったという事は聞いたことがありません。その理由は、次のとおりです。
資格取得までに、企業向けにプレゼンテーションをする機会がある
中小企業診断士として登録をするには、1次試験、2次試験、口述試験、実務補習を突破する事が必要となります。
この実務補習では、企業向けに診断結果を報告する場があり、今まで生きてきてプレゼンテーションをしたことが無い、という方であっても最低一回はプレゼンテーションをする機会があります。
また、実務補習では、指導員(インストラクター)の先生と一緒に診断を行うため、診断に支障をきたすほどの口べたな方が来た場合も、最低限の指導・フォローはしてもらえます。
本人の努力次第なところもありますが、中小企業診断士に登録するまでに何度かプレゼンテーションする機会があるので、大半の方が慣れます。
一次試験合格後に養成課程を経て、中小企業診断士に登録される方もいますが、「中小企業診断士の養成課程の体験談」で紹介しているように、養成課程でもプレゼンテーションをする機会がたくさんあります。
対人サービス業であるため、人と話すことになれる
中小企業診断士の主業務はコンサルティングになりますが、大きな括りでは対人サービス業です。
人と話す機会が多く、人と話す場数を踏むこととなりますので、結果的に人前で話すことに苦手意識を持たなくなることも多いようです。
資料でわかりやすさを担保する
それでも、どうしても人前で話すとあがってしまう…という方がよくされているのは、プレゼンテーションの資料内で、わかりやすさを担保している事が多いように感じます。
スライドや配布資料を工夫するのです
そもそも、セミナーを聞きに来た人は何らかの情報を求めているわけです。
人を惹きつける話し方ができるセミナー講師の方が有利ではありますが、究極的にはセミナー参加者求めている情報が資料で情報提供されるのであれば、それで満足してくれます。
ですので、話が苦手な方は、わかりやすく・役に立つ講演資料づくりを行う事で、その要求品質を達成する、といった方法をとられていることも多いようです。
セミナー業務について知っておきたいこと
セミナー講師の仕事は人づての紹介が多い
セミナーの仕事はどこから依頼されるのか?大半は人づての紹介です。
初めてのセミナーの依頼については、中小診断協会等で一緒に仕事をしている先輩診断士などから、自分の専門分野についてセミナーの依頼があり、それに対応をするというのが一番多いのではないかと思います。
セミナーで顔が売れてくると、セミナーを聞いた参加者から芋づる式で講演をお願いされるような流れになります。
セミナー講師の相場
相場を知るために参考になるものとしては、大分県の診断協会に例示されているもの(講演等講師(1時間当たり) 6万円 但し、テキスト、原稿料等を別料金としている場合もある)や、中小企業基盤整備機構が公表したアンケート結果(講演・教育訓練、130千円/日)があります。
ただし、セミナー講師の報酬は、正直なところ、依頼元の懐事情に大きく左右されるところですので明確に示しづらいところです。
今回は予算がないので〇万円でお願いしますとお願いされて、他の仕事で調整してくれるなど方法は様々です。