中小企業診断士・過去問の使い方と注意点

中小企業診断士・過去問の使い方と注意点

過去問に取り組むということは、現在の自分の実力を確認すると考えがちですが、中小企業診断士試験においては違います。

 

この記事では、中小企業診断士試験での過去問の使い方や注意点について徹底的に解説します。

 

かず

 

過去問は、演習教材ではなく、インプット教材なのです


 

過去問が重要な理由

 

過去問をどのように活用していくべきか、それを説明する前にまず、なぜ過去問が重要なのかを説明します。

 

  1. 出題範囲と問われる深さを把握する
  2. 出題形式や言葉に慣れる
  3. 計算方法を覚える

 

ゆみ

 

大きく3つの視点で詳しく説明しますね


 

 

➀ 過去問で出題範囲と問われる深さを把握する

中小企業診断士試験はその範囲の広さで知られています。例えば財務会計では、簿記一級で出てくるような論点も出題されますし、経営法務では、会社法や民法などが出題範囲として出題されます。

 

ここだけを切り取ると、中小企業診断士に合格するためには、簿記一級レベルの勉強をしなればならないと捉えてしまいがちですが、それは間違いです。

 

簿記一級で問われるような論点出題されるというのであって、簿記一級レベルの勉強をする必要はありません。

 

 

出題される問題には傾向があるため、出題範囲や必要な知識の深さを把握するために過去問を解くのです。

 

ゆみ

 

この論点は、こういう深さまで問われるのか...といった具合です


 

特に「運営管理」「経営情報システム」「経営法務」「中小企業政策」などの暗記系の科目は、類似問題もよく出題されるため過去問を大切にしてください。

 

ただし、注意点があります。

 

中小企業診断士試験においては、専門用語を正確に理解することは大前提ですが、単に文章を暗記しても問題は解けません

 

その「出題のされ方」「回答文の書かれ方」を意識することで、「この用語は、本試験ではこんな風にとわれるのではないか…」ということを意識しながら、関連情報も合わせて記憶することができます。

 

例えば、中小企業政策で出題される各共済制度等はそれぞれの共済制度が比較される形で出題されることも多く、暗記の際には比較表等を作成することが効果的です。

 

このように、限られた時間で、傾向をつかみ有効な方法で学習を進めるために、まずどのような範囲でどのような傾向で問題が出題されるかをつかむことができる過去問対策は有効なのです。

 

 

➁ 過去問で出題形式や言葉に慣れる

中小企業診断士の一次試験は、マークシート方式の出題となります。

 

このマークシート試験に対応するためには、限られた時間の中で、問題文・回答文を正確に理解し適切に問題に回答する方法があるのですが、中小企業診断士試験の問題文は、独特の癖があるものが多く、それに慣れるためにも過去問を多くとく必要があります。

 

 

例えば企業経営理論では、以下のような問題が出題されます。

 

平成30年 企業経営理論 第3問

企業の経営資源に基づく競争優位を考察するVRIOフレームワークにおける模倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。この模倣 困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否かは、A社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない。
  • C社が、新規事業に必要不可欠な経営資源を、その将来における最大価値を下回るコストで入手した場合、競合会社D社が、C社より相当に高いコストでも同 様の経営資源を獲得できる限り、C社の経営資源に模倣困難性はない。
  • 最先端の機械Eを使いこなすために熟練技能者同士の協力関係が必要であり、かつ、熟練技能者同士の協力関係の構築に相当な時間とコストを必要とする場 合、最先端の機械Eを所有しているだけでは、模倣困難性による持続的競争優位 の源泉にはならない。
  • 相当な時間を要して獲得したF社のノウハウやネットワークが、優れた製品を生み出すための重要な要素で希少性もあり、また競合会社が短期間で獲得するにはコスト上の不利が働くとしても、F社の模倣困難性を持つ経営資源にはなりえない。

 

この問題は結局のところ、VRIOフレームワークにおける、模倣困難性に関する記述の中で最も適切なものを問ういわば「暗記系」ともいえる問題です。

 

しかし、模倣困難性の説明として、「模倣困難性は、持続的競争優位を…」という記述がされており、一見すると問題の意味を捉え間違いかねない問題文になっています。

 

かず

 

ほかにも

  • 問題文の補足めいた部分に重要な情報が記載されるケース
  • 回答文において、前提知識+それが正しいかどうかを確認するケース

などもあります。


 

例えば、先ほどの例では「模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否かA社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因」であるかどうか、を理解しているかどうかが重要になります。

 

 

適切な回答を選ぶといった出題形式の場合、回答文の中には、文中にある文言に誤りを混ぜられることも多々あります。

 

専門用語(「ケイパビリティ」が別の言葉に置き換わるなど)を置き換えるパターンや、用途を置き換える(「模倣」ではなく、「外部環境分析」に置き換えるなど)パターン等、様々な出題方法があります。

 

ゆみ

 

しっかり読んで理解しているか?という「問題の読解力」を試してくる、いじわる問題もあるんですよね。特に、企業経営理論...


 

過去問を複数解くうちに、こういった出題形式に慣れることができ、結果として時間内ですべての問題に対処する。回答文の読み間違いをする、といったリスクを低減することが可能になります。

 

こうした出題形式に対応できるようなインプットを行うことが効率的であることから、過去問に取り組むことが重要となるのです。

 

 

 

➂ 過去問で解き方を覚える

財務・会計」「運営管理」「経済学」などで出題される計算問題については、出題される文章は異なっても必要となる公式や計算の手順などは共通していることが多いです。

 

そのため過去問に取り組み、その解答方法をマスターすることで、実際の試験の際にも効果的に回答をすることが可能となります。

 

たく

 

こういう問題では、この公式を使って、こういう手順で解く...という一連の流れを覚えるくらい何度も繰り返すのがベストです


 

 

 

過去問演習のやり方

過去問の大切さを理解していただいた上で、今度は過去問演習のやり方や注意点について紹介します。中小企業診断士試験の難易度は高いのですが、勉強のやり方さえ間違えなければきっと合格できますよ。
過去問演習のやり方

 

過去問を解きはじめる時期

暗記系の科目については、授業やあるいはテキストを一周した段階で、早期に取り組むことがおすすめです。一単元学習したらすぐに過去問をチェックした方がよいです。

 

先述したとおり、記憶を完璧にしていく作業を効果的に行うためにも、事前にどのような範囲で、どのような出題のされ方をするか、を理解してから記憶をすることが効率的に勉強できるからです。

 

ゆみ

 

仮に間違ったとしてもその部分を新たに記憶していけばよいです。過去問と過去問の解説は、演習教材ではなく、インプット教材なのです


 

TACのテキストなどでは、その論点が何年前の過去問に出題されたか、の記載があるため、授業や教科書で一周する前から、論点ごとに過去問を解く、といったことも可能です。

 

 

ただし、計算問題がある「財務・会計」「運営管理」「経済学」については、その計算方法を理解してからでないと、過去問をどれだけ眺めようと、正解にはたどり着けません。

 

そのため、教科書の例題などを繰り返しとき、計算方法がある程度理解できた段階で、過去問に取り組むことをお勧めします。

 

 

過去問は5年分が目安

過去問の取りくむべき期間については、一概にこの期間ということはできませんが、市販されている過去問題集などでは5年分掲載されることが多いです。

 

過去問に取り組むことだけが試験対策ではないので、おおよそ市販の過去問にある範囲を学べば対策は十分と言えるでしょう。

 

ゆみ

 

念のため補足しておくと、5年以上前の過去問は対策しなくてもよい、のではありません。


 

わざわざ10年分の過去問を漁らなくても、ずっと昔に出題された良問は演習問題や模試でピックアップされます。演習問題や模試に出てきた問題、解答解説をしっかり復習しましょう。

 

 

過去問の解き方

過去問の解き方は、計算問題と暗記系の問題で取り組み方が変わります。

 

計算問題

計算問題を解くときの重要な点としては、「時間」を意識することです。計算問題については、本試験では60分など決まった時間で回答する問題数が決まっています。

 

過去問に取り組む際に時間を図らずに漫然と行っていると、解き方を理解したものの、思い出すまで時間がかかるといった状態であっても、「対策ができている」と理解し本試験の際にはタイムオーバーになってしまうことがあります。

 

そのため、過去問を解く際は、試験時間内に合格点以上が間違いなく取れる状態、まで復習をしなければ論点をマスターしているとは言えないのです。

 

暗記系の問題

また、暗記系の問題の場合、問題文をみた段階で回答がわかる程度まではみなさん勉強をされます。

 

ただし、過去に出題された問題と一言一句同じ問題は原則的に二度と出題されません。あくまで暗記のためのあしがかりであるという点に留意が必要です。

 

そのため、過去問で出題形式に慣れ、テキストにある文章も記憶し、本試験で活用できる水準まで到達しているかどうかは、過去問以外の模試や答練でしか図れない、ということに留意する必要があります。

 

 

過去問は最低2回は解くべき

過去問は最低2回は解くことをおすすめしますが、3回以上は個々で異なります。

 

目安としては、計算問題であれば一度解いた問題については、本試験で使う時間の半分程度で計算が終わるようになっている状態。

 

暗記問題については、過去問にある解説文が頭にはいっており、すべての選択肢のどこが正しいか、どこが間違っているか、といった点が説明できる状態になっていることが望ましいといえます。

 

 

過去問演習の留意点

経営法務」「中小企業経営政策」のように毎年出題範囲に関して法改正が起こりうる科目に関しては、過去のものを暗記のために利用することは危険です。

 

また「経営情報システム」等、技術革新が出題内容に影響しかねない科目については、過去問にはない範囲の問題が出題される可能性があるため、留意が必要です。

 

こうした、問題ごとの出題の傾向も過去問を解くことで把握できるようになっていきます。

 

知識やテクニックとして過去問に向き合うほかに、「傾向をつかんで学習に生かす」ということが重要であることに留意することが重要となります。