財務・会計の勉強方法/1次試験
中小企業診断士の1次試験科目「財務・会計」の出題範囲や勉強方法、学習のコツについて解説します。
財務会計は、簿記や経営分析、ファイナンス理論等を学ぶ科目であり、計算問題への対応が必須になる科目です。
受験生の中で計算問題に苦手意識がある方は、財務会計でつまずくことも多くまた、科目合格率が低いことから受験生にとって鬼門となります。
一方で、診断士受験生に多い金融機関にお勤めの方や経理、会計関係のお仕事をされている方にとっては用語になじみもあり抵抗感無く試験に臨むことができる科目であるといえます。
財務・会計では何を学べるのか、どのように勉強すべきなのか詳しく紹介していきましょう。
財務・会計とは?
科目設置の目的
財務・会計に関する知識は企業経営の基本であり、また企業の現状把握や問題点の抽出において、財務諸表等による経営分析は重要な手法となる。
また、今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略の一環として他社の買収等を行うケースが増大することが考えられることから、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価や、企業価値の算定等に関する知識を身につける必要もある。このため、企業の財務・会計について知識を判定する。
財務・会計の配点
財務・会計は中小企業診断士の1次試験の一つの科目で700点のうち100点を占めます。
1次科目 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|
経済学・経済政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
財務・会計の出題範囲
- 簿記の基礎
- 企業会計の基礎
- 原価計算
- 経営分析
- 利益と資金の管理
- キャッシュフロー(CF)
- 資金調達と配当政策
- 投資決定
- 証券投資論
- 企業価値
- デリバティブとリスク管理
上記が、試験要項に記載されている「財務・会計」の出題範囲です。
決算仕訳、貸借対照表や損益計算書の作成といった簿記の基礎から、正味現在価値法といった投資の意思決定まで幅広く財務会計を学びます。日商簿記2級くらいまでの知識が身につきます。
財務・会計の難易度と傾向(概要)
財務会計は、科目合格率が14%強と他の科目と比較すると合格率が低い科目であり、中小企業診断士一次試験の中でも最も科目合格率の低い科目です。つまり、財務・会計を苦手とする受験生が多いということです。
財務会計は計算問題が中心となり、基本的な知識が備わっていれば十分得点は可能です。
ただし、出題数は25問で、1問4点とウエイトが大きいため難問・奇問に左右される点には注意が必要です。
難化する年度は、合格率が10%を切る年度も多くあり、中小企業診断士一次試験でも最も難易度の高い科目とも言われているのです。
攻略法はないか?と考える受験生も多いのですが、財務会計は2次試験の事例Ⅳ(財務・会計)でも出題されます。
したがって、1次試験の財務会計の勉強は疎かにすることなく、しっかりと内容を理解するようにしましょう。学習に時間をかけ、基本的な問題や応用問題にも対応できる下地を作ることが重要です。
なお、公認会計士・公認会計士試験合格者・会計士補・会計士補となる有資格者又は税理士・税理士試験合格者・税理士試験免除者は財務会計の科目免除資格を得ることができます。
財務・会計を学習すると身につく知識
財務会計では、簿記や基本的な財務諸表の理解や、企業経営に活かすための財務分析等を中心としたアカウンティングと、金融等に関するファイナンスを学びます。
財務分析等を中心としたアカウンティング
アカウンティングでは財務諸表に関する知識とその分析の手法を学ぶことができます。単純に比較はできませんが、出題の範囲には簿記2級で出題される範囲も含まれており、実際に中小企業の支援を行う際に必要となる財務諸表から企業の問題点を把握する能力等を高めることができます。
金融等に関するファイナンス
ファイナンスでは、資金の効率的な利用方法を学ぶことができます。企業の資金は株主資本と負債に分かれておりこれをどのように運用していくかそのための基本的な理論を学ぶことができます。
ファイナンスの知識によって中小企業が設備投資等を行う際にその投資が合理的かどうかといった観点での助言ができるようになります。
財務・会計の基本教材
独学で勉強する場合かつ、まだ教材を選んでいない場合であれば、大手資格学校TACが出版している中小企業診断士の1次試験向けの教材が無難です。
TACの通学講座・通信講座で用いられている教材とほぼ同じ市販教材なのです。
テキスト
1次試験に必要な基礎知識が詰まったテキストです。
問題集
1次本試験や模試、答練試験で出題された過去問の中から、重要かつ良問だけを抜粋し、論点毎にまとめられた問題集です。
過去問集
中小企業診断士1次試験で出題された過去5年分の過去問と、解答解説がまとまった過去問集です。
財務・会計の勉強方法
財務会計は範囲だけで言うと簿記一級で出題されるような論点が出題される科目です。したがって、すべての論点について、理論をしっかりと理解して難問にも対応できるように準備していると時間が足りなくなってしまいます。
ですので、財務会計の学習においては、理論について、重要度の低い部分については暗記で済ませると言った割り切りをしてしまう必要があります。
また、財務会計では何より、計算問題の練習量がものを言うため、早期に学習に取りかかり繰り返し計算問題を解くことが重要となります。
初期
学習の初期に行うべきは、簿記の基本の理解と、講義内容の理解です。
アカウンティングについては簿記の知識が前提になっているため予備校などでは財務会計の授業の前に簿記の入門授業を行うなどして居るほど重要です。
しかし、診断士の財務会計の範囲は非常に広いため、授業やテキストでも簿記の基本については短時間で終わってしまいます。
したがって、簿記の基礎がまったくわからない方は、最低限、簿記3級程度の知識は理解できるよう事前に学習しておくことが望ましいです。
教科書や講義では、一つずつの論点について計算問題に対応ができるようにすることが重要です。そのため、教科書に記載されている例題はもちろんのこと、論点毎に過去問に取組それぞれの問題について解答ができるようになるまで、繰り返し問題を解くことが必要になります。
中盤
学習の中盤では、計算のプロセスを完全に自分のものにすることが重要です。
具体的には過去問や演習・模試等を活用し、どのような出題のされ方であっても計算問題に対応できるように問題のパターンになれ、それを複数回解くことで計算の練習を行うことが有効です。
また、中盤の段階でも解けない問題がある場合は、論点そのものが理解できているかを確認し、理解ができていない場合テキストに戻り再度理解できるまで学習をおこなう必要があります。
仕上げ段階
仕上げの段階では、早く時間内に解くための練習を行うことが大切です。
一度解いたことのある過去問や演習について本番を想定し、制限時間を決め、制限時間が終わるまでの間に解答までたどり着くことができるかを確かめ、試験でも時間内に問題を解ききることができるよう準備を行うことが必要です。
試験当日は独特の緊張感のある中、60分間で初見の問題を解かなければなりません。そのため、緊張感のない環境では50分以内に確実解けるようにしておくことが望ましいです。
財務会計の勉強のコツ
財務会計はテキストの文章量が多くとっつきづらいと考えられる方もいらっしゃいますが、図表などで理解をすることで効率的に学習をすることができます。
また、繰り返しにはなりますが範囲が膨大でそれぞれの論点も奥深いので、すべてを理解しようとせず、理論等については暗記で対応するといった割り切りをしながら勉強を進めることが重要です。
頻出項目(頻出論点)
- キャッシュフロー
- 正味現在価値法
- 損益分岐点
- 企業価値
意外と重要な論点
財務会計はどれだけ問題を解いたか、その量が成績に直結します。財務会計というと、計算が多くスマートさが重要になる印象も受けますが、以外にも、地道な計算の練習が必要になるという点が他の科目と大きく異なる点です。
財務会計が苦手な方
基本テキスト、問題集、過去問の3点セットを用いて、しっかりと勉強することで1次試験に合格できるレベルには達します。
ただし、得意不得意は誰にでもあります。財務会計がどうしても苦手だという場合には、以下の市販教材を使って、量をこなしましょう。
「習うより慣れろ」です!財務会計は繰り返し何度も問題を解くことで、知識と知識がつながり理解が深まりますよ。、
どうしても苦手を克服できない場合の対策
ネットで調べると1次試験は簡単に合格できる、とか、1年ストレートで合格しました!という情報がたくさんありますが、中小企業診断士試験の難易度は決して低くありません。
複数年受験を覚悟し、科目合格制度も上手く活用し、苦手科目も一歩一歩落ち着いてコマを進めることも大切です。
いやいや、手っ取り早く苦手科目を克服して、なるべく早く中小企業診断士になりたい!という場合は、独学にこだわり過ぎる必要はないと思います。
たとえば、中小企業診断士の1次試験対策講座ではもっとも有名かつ安定性のある「資格の学校TAC」のWeb講座を受講するのも一つの手段です。
7科目受講すると20万円以上しますが、1次単科生で財務会計のみ受講する場合であれば、4~5万円程度で受講することができます。
そのほか、「STUDYing(スタディング)」や「診断士ゼミナール」など、4~5万円程度で1次試験・2次試験対策ができる格安の通信講座もあります。
各講座の長所や短所は、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。