経営法務の勉強方法/1次試験
中小企業診断士の1次試験科目「経営法務」の出題範囲や勉強方法、学習のコツについて解説します。
経営法務は、会社法をはじめとした企業経営に関する法律を学ぶ科目です。法律というと、弁護士等の法律にかかわる専門職の方でないと縁遠いように感じてしまうかもしれませんが、中小企業診断士も大きく関係します。
会社の開業や会社の意思決定組織、新商品の開発にはつきものの知財関係の法律など企業経営にとっては必要不可欠な知識が多く、中小企業の開業・事業承継・新商品開発等の相談に乗る中小企業診断士にとってはとても重要な知識でもあります。
では、経営法務では何を学べるのか、どのように勉強すべきなのか詳しく紹介していきましょう。
経営法務とは?
科目設置の目的
創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続等に関する実務的な知識を身につける必要がある。
また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。
このため、企業の経営に関する法務について基本的な知識を判定する。
経営法務の配点
経営法務は中小企業診断士の1次試験の一つの科目で700点のうち100点を占めます。
1次科目 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|
経済学・経済政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
経営法務の出題範囲
- 事業開始、会社設立及び倒産等に関する知識
- 知的財産権に関する知識
- 取引関係に関する法務知識
- 企業活動に関する法律知識
- 資本市場へのアクセスと手続
上記が、試験要項に記載されてい「経営法務」の出題範囲です。
会社の設立と登記から株式公開手続、知的財産権といった企業活動に関する法律知識を学びます。法律は毎年改正されるため、改正論点なども出題されます。
経営法務の難易度と傾向(概要)
経営法務は、2016年度に問題数が例年の25問から20問に変更されるなど大きな傾向の変更がありましたが、問題数は25問程度です
1問当たり4点と配点が高いため、難問・鬼門の影響が大きく、また、法律にあまり縁のない方には、独自の言い回しがあることから苦手意識を持つ方が多く、科目合格率が15%弱と財務会計に次ぐ合格率の低さになっております。
なお、弁護士・司法試験合格者等は科目免除の対象となります。
経営法務を学習すると身につく知識
経営法務では、大まかに言って商取引に関する法律・会社法・知的財産権に関する法律を学びます。
商取引に関する法律
商取引に関する法律としては、契約に関する法律として民法等を中心に契約の種類や、物件や債券や、公正な競争を確保するための独占禁止法、製造物に関する製造物責任法等を学びます。
会社法
会社法では、事業開始時の手続きとして定款や各種届出等、また、株式会社の機関や株主総会に加えて企業の成長・発展に合わせて考える必要のある資本政策や廃業にあたって必要な法律の知識を学びます。
知的財産権に関する法律
知的財産権に関する法律としては、特許法など中小企業が新製品を開発した際の技術の守り方や、名称・デザインの保護に関する法律を学びます。
それぞれの知識を学ぶことで、企業が日々の活動を行うことで踏まえる必要のある法律、企業のライフステージごとに必要となる法律、企業が新規事業を起こす際に必要となる法律の概要を知り、中小企業からの事業の相談に対して法律上問題がないかを踏まえながら対応することができるようになります。
経営法務の基本教材
独学で勉強する場合かつ、まだ教材を選んでいない場合であれば、大手資格学校TACが出版している中小企業診断士の1次試験向けの教材が無難です。
TACの通学講座・通信講座で用いられている教材とほぼ同じ市販教材なのです。
テキスト
1次試験に必要な基礎知識が詰まったテキストです。
問題集
1次本試験や模試、答練試験で出題された過去問の中から、重要かつ良問だけを抜粋し、論点毎にまとめられた問題集です。
過去問集
中小企業診断士1次試験で出題された過去5年分の過去問と、解答解説がまとまった過去問集です。
経営法務の勉強方法
経営法務は、試験のある年度の前年度の法改正などが出題範囲となるため、予備校などでも後半に講義が設定されることの多い科目です。
法律にあまり触れていない方にとっては、法律用語の独自言い回しなどになれることができず、また、その範囲も幅広いため、苦手意識を持つ人が多いことが特徴です。
しかし、あくまで試験対策であるという認識で、効率的に学習に取り組むことでこうした出題傾向や苦手意識に対しても効果的に対応をすることが可能です。
初期
学習の初期に重要となるのは、教科書・講義の正確な理解と暗記です。診断士試験では、過去問対策が重視されることが多いですが、経営法務は過去問には幅広い領域から出題されることが多く、広く浅くになってしまう可能性があります。
しかし、経営法務の出題範囲は毎年法改正が行われる可能性があることから、過去問から出題された範囲をやみくもに暗記することは有効ではありません。そのため、まずは各論点の基本を教科書等で完璧にすることが極めて重要だといえます。
なお、毎年の法改正に対応するという観点から、教科書や講義は毎年最新のものを参照する必要があります。そのため、古いテキストや講義のデータ等を使っての学習は絶対に避けましょう。
中盤
学習の中盤で重要となるのは、効率的な暗記です。経営法務は暗記がものをいう科目ですが、頻出論点は会社法・知財関係の一部に限られています。
一方で、民法は難問が出題されることが多いうえに範囲が広く合格に必要な点数を取るためには、全ての論点を学ぶ必要はありません。従って、教科書や演習等を活用して必要な論点だけを集中的に学習するよう心がけましょう。
仕上げ段階
学習の仕上げ段階では、法律の独特の言い回しになれることと図・表の丸暗記が授与用になります。
学習の中盤までの段階で、教科書や演習に記載される重要な論点は理解できたかと思いますので過去問を使い、経営法務の問題の「言い回し」や「出題のされ方」になれるという観点で複数回問題をとくことが有効です。
また直前に模試を活用することにより、その試験年度に出題されそうな論点について様々な形で知識がインプットができているかを検証することも有効です。
経営法務の勉強のコツ
経営法務は、学習領域だけで考えると非常に広く、また各論点が深いため細部論点を深堀すると、本試験では山がはずれ対応ができなくなってしまうことがあります。従ってそれぞれのポイントを理解して、まんべんなく理解をすることが重要です。
また、法律の独自の言い回しと、その出題のされかたになれるためにも演習・過去問に触れ対応のためのテクニックを身につけることが有効です。
頻出項目(頻出論点)
- 会社法
- 特許法
意外と重要な論点
毎年1問から2問程度、海外取引に関する論点が出題されます。こうした論点については設問そのものが英語であることもあり、論点もマニアックなことが多いため、経営法務が苦手な方は対応をあきらめ捨て問題として扱うことが多いようです。
経営法務が苦手な方
基本テキスト、問題集、過去問の3点セットを用いて、しっかりと勉強することで1次試験に合格できるレベルには達します。
ただし、得意不得意は誰にでもあります。法律初学者にとっては経営法務の出題範囲は非常に広く、民法の基礎から学ぶ必要があります。
中小企業診断士試験においては、会社法がとても大切になりますので、以下の参考書で理解を深めるとよいでしょう。
基本的な用語や概念を図表でわかりやすく説明されています。法改正により少し情報は古くなっていますが、わかりやすさはピカイチです。
どうしても苦手を克服できない場合の対策
ネットで調べると1次試験は簡単に合格できる、とか、1年ストレートで合格しました!という情報がたくさんありますが、中小企業診断士試験の難易度は決して低くありません。
複数年受験を覚悟し、科目合格制度も上手く活用し、苦手科目も一歩一歩落ち着いてコマを進めることも大切です。
いやいや、手っ取り早く苦手科目を克服して、なるべく早く中小企業診断士になりたい!という場合は、独学にこだわり過ぎる必要はないと思います。
たとえば、中小企業診断士の1次試験対策講座ではもっとも有名かつ安定性のある「資格の学校TAC」のWeb講座を受講するのも一つの手段です。
7科目受講すると20万円以上しますが、1次単科生で経営法務のみ受講する場合であれば、4~5万円程度で受講することができます。
そのほか、「STUDYing(スタディング)」や「診断士ゼミナール」など、4~5万円程度で1次試験・2次試験対策ができる格安の通信講座もあります。
各講座の長所や短所は、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。