中小企業診断士の養成課程の体験談
中小企業診断士は、2次試験を合格後、実務補習を経て登録するのが主流です。
そして、1次試験合格後に、養成課程で勉強し、診断士に登録する方法もあります。
この記事では、養成課程を経て診断士に登録した本人が、養成課程の費用や入学試験の内容、学習内容について...具体的に詳しく紹介します。
養成課程とは?
診断士を養成するカリキュラムとして、養成課程があります。1次試験合格後に、2次試験に合格、または、この養成課程を修了をもって中小企業診断士に登録することができます。
参考 1次試験の概要と試験対策
養成課程と登録養成課程の違い
中小企業大学校東京校が実施しているのが養成課程、その他の機関が実施しているのが登録養成課程です。
登録養成課程は、養成課程と同等の内容で実施できるなど一定の登録基準を満たしている民間研修機関で、卒業すると中小企業診断士に登録できます。
養成課程の費用と期間
中小企業診断士の養成課程と、費用・募集人数・期間を一覧にまとめました。
時間帯 | 期間 | 費用 | 募集人数 | |
---|---|---|---|---|
中小企業大学校 | 平日 | 6ケ月 | 230万円 | 40-80名 |
法政大学 | 平日 | 1年 | 259万円 | 20名 |
日本生産性本部 | 平日 | 6ケ月 | 252万円 | 32名 |
日本マンパワー | 夜間 | 1年 | 250万円 | 24名 |
名古屋商科大学 | 週末 | 2年 | 346万円 | 18名 |
中部産業連盟 | 夜間 | 1年 | 220万円 | 24名 |
東海学園大学 | 夜間 | 2年 | 150万円 | 8名 |
東洋大学 | 夜間 | 2年 | 257万円 | 8名 |
千葉商科大学 | 週末 | 2年 | 248万円 | ― |
兵庫県立大学 | 選択 | 2年 | 184万円 | 15名 |
城西国際大学 | ― | 2年 | 178万円 | 16名 |
福岡県中小企業診断士協会 | ― | ― | ― | ― |
日本工業大学 | 夜間+週末 | 1年 | 200万円 | ― |
補足
- 大学院で養成コースを設置している場合、中小企業診断士の登録とあわせて、MBAや修士の学位がもらえます。
- 年度によって、募集人数や費用が変わりますので、各機関の公式サイトから最新情報をご確認ください。
養成課程に進学するための試験・審査
診断士一次試験に合格した後に、養成課程に進学するためには各機関の入学試験を受けなければなりません。
費用と時間がネックになりそうなのに、入学試験もあるの?合格率は低いの?
募集定員があるから仕方がないですね。合格率は発表されてませんが、高い確率で合格はしますよ
養成課程の書類審査
養成課程の書類審査では、受験申込書、履歴書などの書類と一緒に審査用の資料を提出します。
また、金融機関や支援機関などから機関派遣される場合は、派遣元の推薦書もあわせて提出することになります。
この書面審査の方法はある程度、実施機関の自主性に任されています。
択一式の試験を行う機関や小論文を提出させる機関など、試験機関によって独自の審査基準を設けていることが多いようです。
養成課程の面接
面接試験では、養成機関の代表者1名と、外部専門家2名による面接試験が主となり、受講者を個々に面接する個別面接法により、登録養成課程の受講の適性を審査されます
- 受講動機
- 協調性・コミュニション能力
- 積極性・態度・表現力
- 健康面
- 資金面
- 研修への専念度
教育機関によって、評価項目の違いがあったり、評価項目の比重は違いますが概ね上記の項目です。
面接試験で、重要となるのは、長丁場である養成課程で、途中離脱をしないかという人格評価の部分ではないかと思います。
実際に、養成課程で行われる講義や実習では、グループでの作業を行うことが多く、あまり我が強い方や積極性に欠ける方は倦厭される傾向にあるようです。
また、実習で行う報告書の作成などでは、ワードやエクセル、パワーポイントといったofficeソフトの基本的な操作ができる必要があり、こうした作業に対応できるか確認をされました。
受験者は全員、診断士1次試験を合格しているため、改めて学力を測るのではなく、内面や性格、やる気などを審査しています
グループディスカッションでは何をするのか?
グループディスカッションについては、試験機関によって実施するかどうかが異なります。
実施される場合は、テーマが事前に課題として与えられている場合と受講生同士のフリーディスカッションになることがあるため、受験される課程を確認することが望ましいです。
- 協調性・コミュニション能力
- 積極性・態度・表現力
教育機関によって多少、評価項目の違いがあったり、評価項目の比重は違いますが概ね上記の項目です。
養成課程の体験談・声
中小企業診断士・一次試験合格後、養成課程に進むと具体的に何をするのか?具体的に紹介したいと思います。
※教育機関によって多少違いがあるということを前提に聞いてくださいね。
養成課程で学ぶこと
私が通った中小企業診断士養成課程では、入学後最初の1ケ月間は演習という形で中小企業診断士の1次試験で学んだ内容を再度確認しました。
その後、実習として商業に関する企業の実地診断、工業に関する企業の実地診断、最後に企業1社の総合診断を行いました。
演習の内容
演習では、コンサルティングスキル、経営戦略の立案、財務会計と言った内容の演習を行いました。
それぞれの演習で班に分けられ、グループディスカッション形式で行われました。そして、受講生同士で積極的に意見交換を行うことが求められました。
この演習の際にはケースディスカッションを行うことも多く、ある中小企業の例として予見文を与えられ、その中小企業に対してどのように支援を行うかを、インストラクターとなる中小企業診断士とともに検討します。
二次試験の事例問題を受講生同士でディスカッションする感じです。
こうした演習を何度も繰り返すことで、実際の支援に必要になる観点や、チームで企業支援を行うといったことに慣れていきました。
実習の内容
約1ケ月間の演習を終えると、実際の中小企業に訪問し、コンサルティングを行う実習が始まります。
実習では、1グループ10名程度に分かれて企業の経営課題の分析と、経営戦略の立案を行います。
実習では講師としてベテランの中小企業診断士がつきますが、基本的には受講生の中からリーダーを決め、このリーダーが中心となってプロジェクトを進めます。
そして、企業の経営課題の分析のために、様々な分析(商圏分析や工程分析など)や戦略の立案を、中小企業に対して行います。
基本的にはこの繰り返しです
実習毎に講師が取組の内容などを評価し、全実習を終え、合格点を取得していると最後の面接試験が行われます。
この面接試験では、基本的には形式的なもので大体の方が合格されているようです。
養成課程で大変だったこと
中小企業診断士の養成課程で最も大変だったのは、やはり実習です。
実習では限られた期間の中で膨大な量の分析を行い、それを基に経営戦略の策定のための議論を行います。
こうやって書くのは簡単ですが、実際は大変なことも多いんです。
分析が間に合わず徹夜で資料を作って睡眠時間が削られてしまったり、議論が紛糾して中小企業への報告の直前まで意見がまとまらなかったり、中には体調を崩すような受講生もいました。
なかなかハードですね。受け身の授業ではないですね
まったく違いますね笑。学びにきている人達なので本気で議論しますし、手抜きは講師が許してくれません
とはいえ、基本的には卒業をさせるための課程であるので、頑張って最後まで食らいつくことができれば診断全体に貢献ができなくてもその努力は評価してもらえるようですよ。
養成課程で楽しかったこと
実際に中小企業のコンサルティングができる、というのは大きな財産となるかと思います。
養成課程の参加者は、様々なバックグラウンドを持つ方がいます。
支援機関、金融機関等から派遣されている人、わたしのように二次試験に何度か落ちてから自費で参加している人、一次試験合格後にすぐ参加している人...さまざまです。
そうした様々なバックグラウンドを持つ方と、半年間近く一緒に研修を受けるため、その後の仕事に活かすことのできるような関係性を構築ができ、非常に有意義でした。
養成課程を経て、中小企業診断士に登録して思うこと
わたしは勤務先からの派遣ではなく、自費参加です。
2次試験を受けるか、養成課程を受けるか、ということをぎりぎりまで悩みました。
結果として、養成課程に行って良かったと思っています。
費用は高いけれどコスパはよい
中小企業診断士の二次試験はきちんと対策をすれば合格できるとも言われています。でも、そのための勉強時間や予備校の試験、また、不合格となったとき一次試験から受け直さなければならないリスクがあります。
参考 2次試験の概要と試験対策
一方で、養成課程は、高額な費用がかかるものの、養成課程に参加することで、確実に中小企業診断士の資格を取得することができます。
また、養成課程でできた人間関係は、その後の仕事にも活かすことができるので、トータルで考えると二次試験を受験するよりも間違いなくコストパフォーマンスが良かったです。
さらに、養成課程での学習内容は、2次試験のケーススタディではなく実践です。
つまり、実際に中小企業診断士に必要とされる知識やノウハウを学びます。2次試験対策のための「良い解答を作るための能力」を磨くと行った時間はありません。
私も養成課程の時間を使って、自分の興味関心がある分野の勉強に時間を割くことができ、これも中小企業診断士として活動するために多いに役立ちました。