経済学・経済政策の勉強方法/1次試験
中小企業診断士の1次試験科目「経済学・経済政策」の出題範囲や勉強方法、学習のコツについて解説します。
経済学・経済政策では、ミクロ経済学とマクロ経済学を学習します。いずれも、数理モデル等の理解が必要となるため、数字や計算が苦手な受験生にとっては財務会計と同様に難しい科目となります。
ですが、経済の流れをつかむことは企業経営にとっては必要不可欠なことであり、経済活動の中心にいる中小企業を支援する診断士にとっても理解が必要な重要な科目です。
経済学・経済政策では何を学べるのか、どのように勉強すべきなのか詳しく紹介していきましょう。
経済学・経済政策とは?
科目設置の目的
企業経営において、基本的なマクロ経済指標の動きを理解し、為替相場、国際収支、雇用・物価動向等を的確に把握することは、経営上の意思決定を行う際の基本である。
また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高め、他方で積極的な財務戦略を展開していくためには、ミクロ経済学の知識を身につけることも必要である。このため、経済学の主要理論及びそれに基づく経済政策について知識を判定する。
経済学・経済政策の配点
経済学・経済政策は中小企業診断士の1次試験の一つの科目で700点のうち100点を占めます。
1次科目 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|
経済学・経済政策 | 60分 | 100点 |
財務・会計 | 60分 | 100点 |
企業経営理論 | 90分 | 100点 |
運営管理 | 90分 | 100点 |
経営法務 | 60分 | 100点 |
経営情報システム | 60分 | 100点 |
中小企業経営・政策 | 90分 | 100点 |
経済学・経済政策の出題範囲
- 国民経済計算の基本的概念
- 主要経済指標の読み方
- 財政政策と金融政策
- 国際収支と為替相場
- 主要経済理論
- 市場メカニズム
- 市場と組織の経済学
- 消費者行動と需要曲線
- 企業行動と供給曲線
- 産業組織と競争促進
上記が、試験要項に記載されている「経済学・経済政策」の出題範囲です。
市場という大きな視点から経済のメカニズムを研究する『マクロ経済学』、個人や企業などの経済活動から市場のメカニズムと景況を分析する『ミクロ経済学』を学びます。
ケインズ理論からゲーム理論まで、経済学を一通り勉強する必要があります。
経済学・経済政策の難易度と傾向(概要)
経済学・経済政策は、科目合格率率が20%弱と他の科目と比較すると合格率が高い科目ですが、年度によって極端に難化することがあり、振れ幅の多いことが特徴です。
また、問題数も、一問4点の配点で25問出題されるため配点が高く、複数の論点にまたがる問題も出題されることがあるため試験範囲の網羅的な理解が必要です。
加えて、計算・数理モデルの理解などが必要となるため計算問題に苦手意識を持つ受験生にとっては鬼門であるといえます。
経済学・経済政策を学習すると身につく知識
経済学では、ミクロ経済学とマクロ経済学を学びます。
ミクロ経済学
ミクロ経済学では、消費者や企業の行動が、市場にどのような影響を与えるかというしてから消費者の行動分析や企業の行動分析を基に、需要と供給が一致する市場の成立条件などを学びます。
マクロ経済学
マクロ経済学では、国全体や国同士の経済活動が、どのように市場に影響を与えるか、という視点から、消費や投資と言った経済変数による国民経済のモデル化や財政・金融政策といった経済政策を巡る学説上の論点などを学びます。
こうした知識を学ぶことで、国の財政政策や企業行動、消費者の行動等が、中小企業にどのような影響を与えるかと言ったことを理解することができ、中小企業の経営戦略を立案する上で重要な外部環境の分析の際などに役立てることができます。
経済学・経済政策の基本教材
独学で勉強する場合かつ、まだ教材を選んでいない場合であれば、大手資格学校TACが出版している中小企業診断士の1次試験向けの教材が無難です。
TACの通学講座・通信講座で用いられている教材とほぼ同じ市販教材なのです。
テキスト
1次試験に必要な基礎知識が詰まったテキストです。
問題集
1次本試験や模試、答練試験で出題された過去問の中から、重要かつ良問だけを抜粋し、論点毎にまとめられた問題集です。
過去問集
中小企業診断士1次試験で出題された過去5年分の過去問と、解答解説がまとまった過去問集です。
経済学・経済政策の勉強方法
経済学・経済政策は学問としてもその範囲が広範にわたるため、奥が深い科目です。
一方で、診断士試験に出題される問題は範囲も限られているため、細かい点まですべて理解しようとせずに試験対策を行うことで合格に近づくことができます。
初期
学習の初期には、講義・教科書の理解が重要です。経済学は、他の科目と異なり基本的な論点を積み上げていって、はじめて応用的な論点が理解できるようになります。
経済学を苦手とする方の多くはミクロ経済学の外部不経済性といった難しい論点でつまずき、理解が進まぬまま次の授業にとりくみついていけなくなってしまいます。
従って、教科書や予備校の講義についても、一つ一つをきっちり理解してから次の授業に進むことにすることが重要です。
中盤
学習の中盤では、図・表の理解が重要になります。経済学ではIS/LM分析など図・表を基に内容を理解する必要のある論点が多く、試験でも、図・表に関する問題が多く出題されます。従って、図・表の意味合いや再現の仕方などを理解することが高得点の鍵となります。
また、あわせて、過去問の対応をおこなうことで基本的な論点の理解が進んでいるかの確認と出題傾向の把握をすることができます。
過去に出題された問題と同様の問題が出題されることはあり得ませんが、どのような論点・どのようなグラフが試験に出題されたかを確認し、その解き方をマスターすることで試験への対応がスムーズになります。
仕上げ段階
仕上げ段階では各論点の基本的な理解が進んでいるかを演習・模試等で再度チェックすることが重要です。
また、経済学は暗記事項の絶対量が少ない代わりに、基本的な理解が追いついていないと問題にまったく対応ができません。
演習・模試等でどうしても解答ができない分野・論点がわかった場合は、一度、講義やテキストに戻り理解ができるまで学習をし直すといった思い切りも重要です。
経済学・経済政策の勉強のコツ
経済学・経済政策の分野は論点毎に、診断士試験のテキスト以上に分厚い入門書が出されているほど、範囲が広く・深い科目です。
したがって、いたずらに難しい内容に手を出す、たくさんの入門書に手をつけるといったことは避ける必要があります。あくまで、診断士の一次試験合格のための勉強だと割り切り、教科書に書いてある基本的な論点の理解に注力することが合格をするための近道です。
頻出項目(頻出論点)
- GDP、GNP
- ADAS
- ISLM
- インフレギャップ
- 死荷重
- 減税の効果
- ゲーム理論
意外と重要な論点
ゲーム理論が出題範囲に含まれます。ゲーム理論では競争戦略の考える上で重要なナッシュ均衡や囚人のジレンマといった概念があり、こうした概念は企業の経営戦略を考える上でも重要であるため、興味を持って学習に取り組む受験生も多いようです。
また経済指標も出題範囲に含まれており暗記が中心となるため、計算が苦手な受験生はこうした科目で点数を積み上げると言った対策も可能です。
経済学・経済政策が苦手な方
基本テキスト、問題集、過去問の3点セットを用いて、しっかりと勉強することで1次試験に合格できるレベルには達します。
ただし、得意不得意は誰にでもあります。経済学・経済政策がどうしても苦手だという場合には、フリーラーニングの石川秀樹先生の教材で理解を深めましょう。
書籍の解説動画を無料で公開されています。公務員試験の経済学対策でも有名な先生で、とてもわかりやすく経済学を教えてくれます。
どうしても苦手を克服できない場合の対策
ネットで調べると1次試験は簡単に合格できる、とか、1年ストレートで合格しました!という情報がたくさんありますが、中小企業診断士試験の難易度は決して低くありません。
複数年受験を覚悟し、科目合格制度も上手く活用し、苦手科目も一歩一歩落ち着いてコマを進めることも大切です。
いやいや、手っ取り早く苦手科目を克服して、なるべく早く中小企業診断士になりたい!という場合は、独学にこだわり過ぎる必要はないと思います。
たとえば、中小企業診断士の1次試験対策講座ではもっとも有名かつ安定性のある「資格の学校TAC」のWeb講座を受講するのも一つの手段です。
7科目受講すると20万円以上しますが、1次単科生で経済学・経済政策のみ受講する場合であれば、4~5万円程度で受講することができます。
そのほか、「STUDYing(スタディング)」や「診断士ゼミナール」など、4~5万円程度で1次試験・2次試験対策ができる格安の通信講座もあります。
各講座の長所や短所は、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。