企業経営理論の勉強方法/1次試験

企業経営理論の勉強方法/中小企業診断士1次試験

中小企業診断士の1次試験科目「企業経営理論」の出題範囲や勉強方法学習のコツについて解説します。

 

企業経営理論は、中小企業診断士の科目の中でも中核的な意味を持つ科目です。経営戦略の立て方やマーケティングについて学ぶ科目ですから、実際の仕事(特に企画や営業職)に密接に関わっています。

 

そういった意味では、職種によっては取り組みやすさもある科目といえます。

 

それでは、企業経営理論では何を学べるのか、どのように勉強すべきなのか詳しく紹介していきましょう。

 

 

企業経営理論とは?

科目設置の目的

企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。

 

また、近年、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。

 

このため、経営戦略論、組織論、マーケティング論といった企業経営に関する知識について判定する。

出典:中小企業診断士試験(試験要項より抜粋)

 

企業経営理論の配点

企業経営理論は中小企業診断士の1次試験の一つの科目で700点のうち100点を占めます。

 

1次科目試験時間配点
経済学・経済政策60分100点
財務・会計60分100点
企業経営理論90分100点
運営管理90分100点
経営法務60分100点
経営情報システム60分100点
中小企業経営・政策90分100点

 

企業経営理論の出題範囲

  • 経営計画と経営管理
  • 企業戦略
  • 成長戦略
  • 経営資源戦略
  • 競争戦略
  • 技術経営(MOT)
  • 国際経営(グローバル戦略)
  • 企業の社会的責任(CSR)
  • 経営組織の形態と構造
  • 経営組織の運営
  • 人的資源管理
  • マーケティングの基礎概念
  • マーケティング計画と市場調査
  • 消費者行動
  • 製品計画
  • 製品開発
  • 価格計画
  • 流通チャネルと物流
  • プロモーション
  • 応用マーケティング

上記が、試験要項に記載されている「企業経営理論」の出題範囲です。

 

大きく分けて、経営戦略論、組織論、マーケティング論の3つテーマを学びます。SWOT分析などのフレームワークから、モチベーション理論や労働関連法規といった人的資源管理、さらには4PやCRMといったマーケティング理論など幅広い分野から出題されます。

 

 

 

企業経営理論の難易度と傾向(概要)

企業経営理論の難易度と傾向

 

科目としての合格率は、過去5年で年平均15.1%です。一次試験全体の合格率や約20%ですから、比較的難易度の高い科目といえます。

 

最近で見ると、平成28年は非常に高く29.6%、平成29年は非常に低く、9.0%となっています。年によっては難易度の変動も激しい科目ともいえます。

 

企業経営理論を学習すると身につく知識

企業経営理論は、中小企業診断士の資格獲得に繋がるだけでなく、現実の受験者の実務(企画・営業・販売)や、資格取得後にコンサルティングの仕事をする際に直接的に役に立つ科目です。

 

2次試験に直結

企業経営理論で学ぶ内容は、2次試験の「事例問題」で必須の知識となります。経営戦略・組織論・マーケティング戦略を含む科目ですから、診断事例に基づいてコンサルティング提案を行う2次試験の「事例問題」には必須の知識なのです。

 

実務にも活用できる

経営戦略・組織論・マーケティング戦略はビジネスマンとしてどこでも使える知識です。特に、中間管理職に必須の知識です。また、企画営業やコンサルティングなど、実際の仕事の現場で役立つ即実践できる知識を学ぶことができます。

 

 

企業経営理論の基本教材

独学で勉強する場合かつ、まだ教材を選んでいない場合であれば、大手資格学校TACが出版している中小企業診断士の1次試験向けの教材が無難です。

 

ゆみ

 

TACの通学講座・通信講座で用いられている教材とほぼ同じ市販教材なのです。


 

テキスト

1次試験に必要な基礎知識が詰まったテキストです。

 

 

問題集

1次本試験や模試、答練試験で出題された過去問の中から、重要かつ良問だけを抜粋し、論点毎にまとめられた問題集です。

 

 

過去問集

中小企業診断士1次試験で出題された過去5年分の過去問と、解答解説がまとまった過去問集です。

 

 

 

企業経営理論の勉強方法

企業経営理論の勉強方法

 

企業経営理論は、以下の3ステップで計画的に学習すると良いでしょう。特に、この科目をスタートにする受験生も多いと思いますが、後の6科目の配分も考慮しながら、学習していきましょう。

 

ゆみ

 

念のため補足しますが...「1次試験勉強の成長ステップ」の記事で紹介したように、最初はテキストを読んでも理解できないところからはじまります。焦ってはダメですよ。


 

初期

最初は、やはりインプット学習が中心になります。しかし、インプットに時間をかけ過ぎないことが重要です。学校での勉強は、テキストをしっかり理解することが重視されますが、先ずは一通り読み通すところから始めましょう。

 

経営戦略やマーケティングの分野は、暗記するというより、考え方を理解することが重要です。不明なキーワードは用語集やネットで検索しつつ、理解を深めていきましょう。

 

組織論の法律・規定関係はどうしても暗記が必須になります。しかし、法律や規定にも主旨はあります。やはり考え方も理解しつつ暗記しましょう。

 

ただし、テキスト全てを終わってからアウトプット(問題)をするのは好ましくありません。小さな章単位が終わるたびに振り返りの小問題にトライ出来るテキストを使用すると良いでしょう。

 

中盤

過去問題でのアウトプットが中心の学習になります。問題を解いて採点した後、失点したり不明だったりした箇所をテキスト振り返ることで知識の定着を図ります。

 

過去問題を解いて不合格だったとしても、気にする必要はありません。過去問題を解くことにより、出題のパターンや意図を掴んでいくことが重要です。

 

つまり、診断士学習における過去問題は、力を試すためというより、過去問で出題されたテーマをテキストで振り返り、知識を「使える状態」にする事が重要です。

 

過去問でそれでも理解できなかったキーワードや内容は必ずテキストに付箋などをして、再度学習が必要なポイントとして明確にしておきましょう。

 

仕上げ段階

得られた知識を元に、キーワード体系表を作ることをお薦めします。体系表は他の科目でも有効ですが、特に企業経営理論では有効です。

 

2次試験の事例問題を解くときには、具体策が求められます。体系図として理解をしておくと、体系図のどの部分から具体策を引きだしたらよいのかが自然に考えられるからです。

 

キーワード体系表とは、重要な用語を、ツリー状の図に整理するということです。テキストの目次や経営戦略のフレームごとに重要用語のみを配置していきます。

 

キーワード体系表は、必ず1枚の紙に仕上げましょう。A3が理想です。キーワードを整理することにより、科目の全体像を理解できますし、不明な箇所もハッキリしてきます。出題されたときに、どの部分からの出題であるかが思い出されます。

 

かず

 

過去問や演習問題は実力チェックの教材ではなく、インプット教材です。「1次試験対策・過去問の使い方と注意点」の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてくださいね。


 

 

企業経営理論の勉強のコツ

キーワードは暗記ではなく理解

この科目にも、膨大なキーワードがありますが、それを暗記ばかりしても、意味がありません。

 

最低限のキーワードは暗記するより理解することを心がけ、問題を論理的に答えることが重要になります。そういった意味でも、長時間のインプットは時間の無駄です。

 

何と言っても過去問が中心

インプットはソコソコにして、過去問題に慣れていくことが重要です。理論やキーワードの理解が曖昧でも、正誤問題の解説を見ることにより、自分が理解していなかった部分が明白になります。

 

出題者の著作物での対策は?

診断士の出題者は明らかになっていませんが、分野によっては特定の書籍から出題が多い場合もあります。

 

 

出題者の著作から学習する方法もありますが、あくまでも自分なりの仕上げが完了した後で、余裕がある場合に研究しましょう。

 

自分の学習がある程度完了していない状態で、不確定な情報を元に学習するのは危険なのであくまでも参考程度にとどめておいてください。

 

 

頻出項目(頻出論点)

経営戦略論

各種の経営理論、フレームワークの意味は全て理解しておきましょう。どの部分からも出題されます。

 

組織論

組織構造論やモチベーション理論、リーダーシップ論はしっかり抑えておきましょう。逆に、労働関連法規関連は必ず出題されますが、3~5問であり、あまりにも細かい設問も多いため、学習の状況によっては捨てる決断も必要です。

 

マーケティング

ブランドやマーケティングミックス(4P)、消費者の購買行動などはしっかり抑えておきましょう。

 

意外と重要な論点

現実の社会事例に即した問題への対応
この科目では、従来からの理論に加えて、現代的な経営テーマも出題されます。そんなテーマに対してはテキストだけでは対応出来ません。

 

常日頃から最近の中小企業の経営課題には目を光らせておかなくてはなりません。具体的な対応方法としては、日経新聞や中小企業白書のトレンドな部分を押えておくことをお勧めします。

 

 

企業経営理論が苦手な方

基本テキスト、問題集、過去問の3点セットを用いて、しっかりと勉強することで1次試験に合格できるレベルには達します。

 

ただし、得意不得意は誰にでもあります。企業経営理論がどうしても苦手だという場合には、長年出題委員を務めている方が執筆した以下の書籍を読んで理解を深めましょう。

 

 

ゆみ

 

出題者がどのような言葉を使って説明しているのか、背景を知ることで正誤判定がしやすいくなります。


 

どうしても苦手を克服できない場合の対策

ネットで調べると1次試験は簡単に合格できる、とか、1年ストレートで合格しました!という情報がたくさんありますが、中小企業診断士試験の難易度は決して低くありません。

 

複数年受験を覚悟し、科目合格制度も上手く活用し、苦手科目も一歩一歩落ち着いてコマを進めることも大切です。

 

ゆみ

 

いやいや、手っ取り早く苦手科目を克服して、なるべく早く中小企業診断士になりたい!という場合は、独学にこだわり過ぎる必要はないと思います。


 

たとえば、中小企業診断士の1次試験対策講座ではもっとも有名かつ安定性のある「資格の学校TAC」のWeb講座を受講するのも一つの手段です。

 

7科目受講すると20万円以上しますが、1次単科生で企業経営理論のみ受講する場合であれば、4~5万円程度で受講することができます。

 

そのほか、「STUDYing(スタディング)」や「診断士ゼミナール」など、4~5万円程度で1次試験・2次試験対策ができる格安の通信講座もあります。

 

各講座の長所や短所は、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。